医療ドラマは、画面を通じて病院の舞台裏を垣間見れる魅力がある。
だが、その魅力とは反対に、現実とはかけ離れた「あるある」ならぬ「ないない」の世界が広がっているのだ。
例えばドラマではよく一人の看護師が外来から病棟、さらには手術室まで担当している光景が見られる。
しかし、実際の病院ではそれぞれ専属の看護師が担当するのが基本だ。
病棟ですら診療科や病床機能で分担していることを考えると、一人で全ての部署を担当することがあり得ないのは納得だろう。
また、医療ドラマは医師や看護師が患者と深い個人的な関係を築くシーンも多いが、実際の医療現場では一定の距離を保つことが重要とされる。
そのため、こうした密接な関係はほとんど存在しないとも言えるだろう。
緊急事態が発生した際に院内が大混乱に陥り医師や看護師が走り回るシーンも、実際にはないに等しい。
実際には緊急事態に備えて徹底されたプロトコルがあり、訓練されたスタッフが対応するためドラマのような混沌とした光景は見られないのだ。
医療ドラマでは時折、最新技術や未認可の治療法で奇跡を起こす描写があるが、承認されていない治療法は治験を除きもちろん制限されている。
患者の安全を守るために、実証された治療法や薬のみを使用するのだ。
医療ドラマが描く医療従事者のヒーロー的な存在感やドラマチックな展開は、視聴者を引き付ける要素である。
一方、現実の医療現場はチームで協力して患者のために働く、多くの専門家によって支えられている。
医療ドラマと現実のギャップを理解することで医療への理解が深まり、現実の医療従事者への敬意が高まるだろう。